民話「あまんじゃく」


私の住んでいる 広島市郊外の瀬戸内海の島々が美しい港町・五日市地区の
民話”あまんじゃく” です。
 むかし瀬戸内海の見える海辺の村に父と子が住んでいました。
 この子は大変な悪ガキで村人の言うことも親の言うことにもことごとく逆らっていました。
 このため村人はこの子に”あまんじゃく”と言うあだ名をつけていました。
 父親が右と言えば左、「おとなしくしなさい」と言えば、大暴れする。
 父親の死期が近づき父親は心配になってきました。

 「自分が死んだら墓は村人と同じように、山の上に立ててもらいたいものだ。 しかし、息子はあのとおりのあまんじゃくだ。さて、どうしたものかいのお。そうだ、良い考えがある・・」。

 ある日、父親は枕元にあまんじゃくを呼んで、「わしが死んだら、海に墓を造ってくれよ」と遺言を託しました。やがて父親は亡くなりました。
 あまんじゃくは父の死に嘆き悲しみました。
 「今まで親に逆らって親不孝なことばかりしてきた。もう親孝行しようにも、それはできない・・。そうだ、遺言だけは言いつけを守ろう。それが ただ一つの親孝行の真似事だ」。

 こうして、あまんじゃくは遺言どおりに瀬戸内海の小島に父親の墓を建ててしまいました。
 以後のあまんじゃくは生活を一変し、村のために尽くす立派な人になりました。あまんじゃくは、ほんとは親孝行のやさしい子だったんだね。

というストーリーです。岸から数百メートル先に浮かぶ直径二十mの小島、津久根島があまんじゃく民話の舞台です。